エリクソン 第3回

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#エリクソン 第3回
教科書で整理されたエリクソン理論と、著作から受けるイメージはかなり違います。エリクソンといえば8つの発達段階ね、みたいにならずに、できる限り著作を読んだ方がいい学者です。

課題本第二章のはじめで、エリクソンは、自我アイデンティティと集団アイデンティティについてのノートを示します。

最初は、フロイトの自我論の整理から。
フロイトの自我は、本能的なイドと、ルボンの描く無秩序な群衆という集合的なあり方の間にあります。しかし、本能も群衆もあまりにも無秩序で、その状態ではサバイバルできません。そこで、こどもは、社会の期待する道徳を内面化した超自我を獲得することで、道徳的な秩序を受け入れます。ただし、超自我は自我を圧迫します。一方で本能的なイドも衝動として自我を圧迫しますので、自我は挟まれて厳しい状況です。

ただ、エリクソンはこの圧迫の側面だけに目を向けないように、注意喚起します。圧力により苦しむこども、ではなくて、どのように道徳的秩序をこどもが受け入れるようになるのか。その発生についてみなければいけませんし、そこをみれば、エディプス的な、家族内部だけで片付く話ではない共同体の歴史の問題が出てくるはずだとします。

「明確なかたちをもたない人間集団の中での自我消失についての研究から、社会生活における幼児的な自我の、まさに起源という問題に関心を移さなくてはならない。どのような社会組織の圧力が子どもを否定しがちかという問題を強調する代わりに、われわれは、どのような社会秩序がまず子どもが生き続けられるようにし、特有のやり方でその欲求を満たしながら、子どもたちを特定の文化スタイルの中へと導いていくのかを明らかにしたいと考えている。そして、エディプス三角形のような本能的な「所与」を、人間の非合理的な行為を説明するための、還元不能の構図として受け入れる代わりに、われわれは、社会組織が家族の構造を決定するしかたを探求している。」p45

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